物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

オネイロスの伝言

昔、学生の頃に読んでひっかかっている小説があるという話をしたら、友人が国会図書館で調べてコピーしてくれたのです。ありがたいことです。多謝。

有為エンジェル「オネイロスの伝言」という作品です。雑誌「群像」の1984年3月号に掲載されたものです。30年以上前に読んだきりなので、記憶もあいまいになっていました。

そうそう…ということは私はまだ10代でした。確か、大学の図書館で偶然目にとめて読み始めたのでした。

元美術教師で浮気性の父親と古風なようでドライな母親。その間に生まれた、不思議な透視能力を持つ空海という少年の物語。空海は高校生になると、大人たちの上におぞましい幻を見るようになります。

この幻覚が、まるで「サルチネス」なんです。

読んでいて思い出したのは、10代の頃の私にも、こういうのが見えていたということです。それで、この作品が忘れられなかったのですね。そういうことだったのか…。

まだぎりぎり10代の行き詰った自分をリアルに体験しました。いやぁ…(汗。

サルチネス

古谷実のマンガ「サルチネス」(全4巻)を今頃読みました。

f:id:machienpro13:20170111205400j:plain

家族はみんな読んでいたのですが、1巻がずーっと見当たらなかったんです。それが、暮れにほんのちょっとだけ掃除をしていたら、その1巻が出てきまして。

面白かった~。日本のマンガって文学なんだなぁとしみじみ。あ、このかたのマンガが特殊なのかな。

中年の引きこもりの男が、妹のために自立しようと頑張る物語です。頑張ると言っても、かなり一般から外れた彼なりの頑張り方なので、もう全然一般には通用しないのですが、なんか癒されました。

(ちょっと疲れているのかな…)

それから、終わり方が強引なのにもびっくり。えっ、これで終わり? でも、それも面白いなぁと。

キャラが描けていれば、ストーリーなんてどうだっていいのかもしれないなぁなんて思いました。

勉強になりました。

保護色

昆虫の本など読んでみました。

この本、 14歳の世渡り術というシリーズの一冊のようです。小説も自分の違う人になってその世界を想像してみるのが面白いですが、これも著者の話術によって私たちにとっても最も身近な虫たちの世渡り術をうっかり垣間見てしまう本です。

f:id:machienpro13:20161228174500j:plain

たとえば…うーん、ゴキブリの話とか、身近なのに知らないことがたくさんあって驚きました。そうそう、身近なところでは、アリの話が面白かったですね。

社会性昆虫ってその集団がひとつの生き物みたいに分業になっちゃっていて、人間から見るとかなり苦しそうですが、このおかしな習性を利用しない手はないと、アリの巣の周辺にはその恩恵を受ける色々な生物がいるそうなんです。

アリマキみたいに共生しているものはもちろんですが、アリに擬態してアリの修正などもうまく利用してその集団の中で生活させてもらっちゃう虫がいたり。逆に別の種のアリの働きアリのサナギを強奪して自分の巣にもってきて奴隷として働かせちゃうという種のアリがあるとか。

こちらも、石に擬態でしょうか?

すごい顔で見られてしまいました。

f:id:machienpro13:20170104101900j:plain

先日は、枯葉が積もったところに寝そべっていた同じ色の猫が、いきなり飛び上がって、こちらもびっくりしてしまいました。

 

 

あけましておめでとうございます。

皆さま、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

年が明けると同時に、家族で近所の神社にお参りに行ってきました。

お参りの後はもあったかい甘酒をいただきながら火にあたりました。大昔の人たちは、こうやって暖をとったのだろうなぁと想像してしまいました。

f:id:machienpro13:20170101005000j:plain

おみくじを引いたら「小吉」でした。

「甘言雑言に迷うことなかれ」と。そして、「決して色に溺れるな」と。

ええっ…私にそんなことがあるのでしょうか?

いえ、はい、真面目にがんばりたいと思います。

ひたすら、国道6号線。

日付が変わってしまいましたが、昨日、高校演劇の関東大会に行きました。茨城の清真学園高等学校 「ひたすら、国道51→6号線。(仮)」を観たいなぁと思ったもので。きちんと現在の茨城の視点につくりなおされていて、胸にくるものがありました。

この作品は新宿高校の髙木優希さんの作品で、ちょうど震災があった2011年の都大会で上演されたのでしたっけ。

私はこのときの都大会せっかく足を運んだのに、最初の上演だったこの作品を見のがしてしまい、最後の講評で審査の方々の話を聞いてめちゃくちゃ気になってしまいました。

このときの審査員は前田司郎さんがおられ、お話が非常に明確だったのが印象に残っています。「濡れた太陽」が出版される半年前のことです。

脚本の質の高さは話を聞いているだけで伝わってきましたが、ただ、震災からまだ間もないこともあり、それをテーマにしたものは審査員の方々はそれほど好意的ではなかったような気がします。どう表現してよいか混乱している時期でしたから。

でも、他にも劇を見て気になったかたが多くおられたのてしょう。翌年の3月に被災地の舞台表現を支援するプロジェクトで、福島の相馬高校と郡山のあさか開成高校と一緒に都内で上演されました。私が見たのはこのときです。

確かに震災を扱っているのですが、そこには不自然な目線はまったくなく、あまりに地に足がついた表現であることに共感しました。まだ混乱しているにしても、その状態を自分の立ち位置(新宿)から見ようとしているところに。

私は2012年の春から創作を本気でやろと考えていましたが、「ひたすら、国道6号線。」はまさに私の背中を後押ししてくれた作品でした。

その高木さんの脚本が上演されるのを見て、初心を思い出しました。勇気づけられました。

消滅世界

あまり寒くならずに過ごしやすいはずなのに、今年の暮れは妙に疲れていまして…。

書こうと思うこともあれこれあり、ブログを更新しようと毎晩思うのですが、諦めて寝てしまう日々でした。年賀状もまだ白紙のままです。

今夜は「月刊社会教育を読む会」もあったのですが、さぼって夕飯の買い物をしていたら主宰のMさんにばったり会うということもあったりしました。でも、さぼりましたね。すみません。

それでも、村田沙耶香さんの小説は何冊か読みました。まず、それぞれふたつの短編が入った二冊を読みました。

『ギンイロノウタ』(表題作と「ひかりのあしおと」も収録)のほうは、二作ともかなり壊れた感じの学生の女の子が主人公です。違うタイプですが「コンビニ人間」とも共通するところがあるようにも思いました。

でも、『星が吸う水』(「ガマズミ航海」も収録)のほうはどちらも20代後半の女性が主人公で、あまりに元気です。今どき珍しいなと思いました。

「星~」は女性たちそれぞれの彼氏とのつき合い方、「ガマズミ~」は年下の女性との性的ではない関係が描かれます。恋愛について語る主人公の考え方にがあまりにごもっとも。

先日の読書会で読んだレベッカ・ブラウン「パン」はなかなか難しかったようですが、この本を読むと理解の助けになるかもしれません。

f:id:machienpro13:20161225150200j:plain

平行して長編「消滅世界」も読みました。恋愛関係と夫婦関係の違い、その形態が時代によってうつり変わるのはなんとなく想像できますが、かなりいっちゃっています。色々考えさせられ、面白かった。アメリカの小説『デリリウム17』、映画『ロブスター』なども思い出しました。

f:id:machienpro13:20161222141800j:plain 

どの作品も一般的価値観に縛られていないところが面白く、また、著者のエネルギーを感じました。元気なかたなかだなぁと。

コンビニ人間

暮れもだんだん押し迫ってきました。ブログもなかなか更新できないまま、疲労がたまって、週末は家族で温泉に…

という元気も余裕もなく、多摩線が最寄りの、源泉からひいているらしい、天然くりひら温泉に行ってきました。ナトリウム-炭酸水素塩温泉で、肩こりや疲労回復などにも効くそうです。

効いたといえば、効いたような気もしますね。などと、ぼんやりしていたところ…

今日は、読もう読もうと思って読んでいなかった、少し前に芥川賞を受賞して話題になっていた村田沙耶香氏の「コンビニ人間」を読みました。

止められなくなって、一気に全部読みました。えええ~、こういうことだったのかぁ…と、びっくりして目が覚めました。

私も薄々そうじゃないかと思っていましたが(実際、それぞれの登場人物に似ている人が身近にもいますね)これが現代なんだなぁ…と。大変勉強になりました。

f:id:machienpro13:20161219230500j:plain