物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

ギュンター・グラス

f:id:machienpro13:20130528224100j:plain

 急に気になって『ブリキの太鼓』を読みました。昔の映画が有名ですが、第二次大戦中のダンツィヒ、三歳で成長をストップさせたオスカルがブリキの太鼓を叩き、奇声を発発してガラスを割るという、あれです。

 語りの密度の濃さとボリュームに圧倒され、また、その奇想天外な物語がどのように生まれたのか不思議だったので、この小説がこの世に出るまでのことを書いた作家ギュンター・グラス氏の自伝『玉ねぎの皮をむきながら』を手にとりました。『ブリキの太鼓』の色々な場面がここで語られる事実と合致していることに、やっぱり文学史に残るような小説の核になるのは実体験なんだなぁと心から思いました。

 でも、この自伝では玉ねぎの皮をむくように小説に書かれなかったことも語られていきます。「仕事柄、何年にもわたって自分自身を徹底的に搾り出さなくてはならない者は、残されたものの価値がわかるようになる」というグラスの言葉。グラスがナチスの親衛隊員だったという事実。帯に衝撃的な言葉が書かれている通り、何年か前にこの本で明かされた事実が世間を驚かせたようです。現実に起こっていることも知らず、最年少17歳で対戦車兵として武装親衛隊というものに招集されたということみたいですけどね。

 自伝には『ブリキの太鼓』成立までの半生が描かれています。出版は2006年ということで、79歳のとき。最近の反核の発言なども含め、あらためてエネルギッシュな人だなぁ…と。

 

f:id:machienpro13:20120929072856j:plain  村上春樹風の歌を聴け

読書会でとりあげることになったので読んでみました。この本は出版とほぼ同時に一度読んでいるのですが、もう何十年も前というだけじゃなく、高校生になるかならないかの頃だったので意味がわかっていなかったのかもしれないなぁというのがわかりました。それとも、時代が変わって、受け取り方も変わったのか…。

あの頃は、これが現代文学というものなのかと衝撃を受け、色々な本を読むきっかけになったのですけれど。…あれっ、もしかすると、映画『ブリキの太鼓』が話題になったのもこの頃でしたか。80年くらいじゃないかな?

それから、やっぱり『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』とちょっとつながっているのかもと思いました。この続きは9月の読書会で。よろしくお願いします!(6/1追記)