物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

ささやかだけれど役にたつ読書会

 昨日の続き。

 そうそう書き忘れるところでしたが、私たちの〈ささやかだけれど役にたつ読書会〉はごく初期、カーヴァーの短篇『ささやかだけれど役にたつこと』をとりあげたことからネーミングされているんです。というか、カーヴァーを読むことから始まった読書会と言ってもいいくらい。2007年の終わり頃だったか。

 この物語はごくごく普通の日常の中で絶望的なひどいことが起こって最悪の結果になってしまうので、参加した方々みなさん身につまされてショックを受けたんです。最悪の経験をした心をかたくした人たちがどうやってコミュニケーションを成立させるかというところがカーヴァーの腕の見せどころです。とてもびっくりしました。

 この2007年頃、なぜか、私たちのグループもよくわからない外圧につぶされかけていました。まったく根拠のない中傷を受け、それに便乗した悪意などもあって、それをどう理解してよいのかわからず混乱していました。今考えると色々なことが重なって起こったのだと理解できるし、何か時代の変わり目もあっのでしょう。当時、そんな状態に抗うほどむしろ自分を見失ってしまいそうだったので、地道に読書会をしようと思い立ったのです。なので、この物語はとても参考になりました。まさに役に立ったんです。

 初期にはカーヴァーの作品を続けてとりあげました。『でぶ』は、みんなが避けるようなものすごい大食の人にウエイトレスが深く心を通わせるようになる話。カーヴァーの代表作『大聖堂』は、妻が友人である盲人男性を家に招く話。夫はこの盲人にあまり良い感情を持っていないのですが、気がつくと見えないはずのものを一緒に見ているんです。

 カーヴァーの作品ではたいていいつも、差別されている人への愛情を感じます。……昨日の伝記を読み進めますかね。

f:id:machienpro13:20120807013751j:plain 【7/28追記】

 カーヴァーの伝記は彼が作家になっていくいきさつが詳しく書かれているので、小説作法の本としても読めると思います。それで、面白いなと思ったのがインタヴューに答えているカーヴァーの言葉。

「物語の『素材』になると私が思うことのほとんどは、私が二十歳になったあとに私の前に現れたものだ。人の親になる前の自分の人生について覚えていることはあまりない。二十歳になって結婚して子供ができたときに自分の人生は始まったという気がするんだ。そのときから、いろんなことが起こり始めた」

 6月21日の『君本家の誘拐』の読書会のときの話とも重なるなぁと思いました。あのときは結婚し、子どもをもつことで女性の人生が変わるということだったけど、やっぱり男性も変わるんですよね。

 ところで、久し振りに読書会にカーヴァーの短篇をとりあげてもいいかもね。あと、今、ジブリのアニメ映画『風立ちぬ』をやっているので(私は観てないけど)、堀辰雄の作品をとりあげてもいいかなぁと思うんですけど、いかがでしょう?