物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

ハンナ・アーレント/大雪

 雪、すごいですね~。うちの家の前の通りも、こんなです。

いや、今はもう吹雪いていると言ったほうがいい感じ。こんなに降るとは…。

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さて、やっと映画『ハンナ・アーレント』を観てきました。二番館でも、まだまだ混んでいて満員でした。お客さんは圧倒的に年配の人ですかね。

それにしても、アーレントが映画になるのも、こんなにたくさんの人がアーレントに興味があるのも驚きです。どうしてなんでしょうね?

確かに、映画はとてもよくできていました。前半は、女優さんがあまりアーレントっぽくないなぁと観ていたのですが、ラストでアーレントが言わんとするもっとも大事なところを観客が理解できるつくりになっているとわかって、なるほどと納得。やられたなって思いました。

でも、映画に描かれているのはアーレントの人となりやロマンスではなくて、彼女の思想の核。人間にとって思考することがいかに必要なことかと。

そんなわけで、ナチス戦犯アイヒマンの裁判の傍聴から、レポート執筆とその後の騒動にスポットが当たっています。

三年続いた騒動の熱狂が実際どの程度だったのかわかりませんが、現在、アイヒマン裁判についてはアーレント主張した方向で理解していました。でも、現在はかえって新鮮に感じられます。

私が最初にアイヒマンの映像を見たのは今から17、8年前です。ちょうど30を過ぎて出産した第一子がよちよち歩いていた頃。結婚、出産、転居を集中して経験し、自分が大事にしてきたものを玉葱のようにむかれてしまって何もなくなってしまった時期でした。自己喪失状態のとき。保育をつけて学べる公民館の文学講座で、なぜかこの映像を見せてもらったのです。

自分で思考することができない人は、悪い時代にはとんでもない考えに流されてひどい悪を行うということを、ありそうなことだと感じました。自分と遠い世界の史実だと思ったけれど、アイデンティティを喪失していた私には怖かった。

当時、アイヒマンのことも少し調べました。政治哲学者アーレントのことも知りました。『全体主義の起源』や『人間の条件』は簡単に読めませんでしたけれど、伝記は面白かった。

そうそう、映画の中、アーレントがちょっとだけ亡くなった父親について語るところがあるんです。この伝記で私が一番印象に残ったのが、父親を亡くした直後のところでした。七歳だったアーレントが自分の感情を抑制するんです。

ああ、こんなに頭脳明晰な人でも、女性がとらわれるがんじがらめを経験するんだなとしみじみ思いました。それなら、私がそうであっても、不思議はありません。もちろんアーレントの場合は教育熱心だった母親が気づき、本人もそれをうまく乗り越えるんですけれどね。

アーレントフェミニズムと一線を画すと言われますが、狭い意味でのフェミニズムとか、ある限定された部分についてのフェミニズムに対してのことなのではないかなぁと思うんですよね。私自身は、アーレントを知ることで女性の問題を考えるスタート地点に立った気がしています。

それから、映画でアーレントが夫のハインリヒととても仲睦まじく生活しているところはとても微笑ましいのですが、同時にお互いに異性の友だち(恋人?)がいることが示唆されています。だからこそ仲良くやっているように見えるのかもしれないなとも思いました。なかなか深い夫婦関係です。

 

夜になって、雪はこんな感じです。

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東京では45年ぶりの大雪だとか。確かに、こんな雪を見たのは生まれて初めて。裏庭の吹きだまりは腰まで埋もれそうです。