物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

「貘集」と「ヤンデレ夫婦漫画」

▼高校生大学生を中心にした〈ことばらんど読書会〉は、次回7月22日(金)夕方6時から町田市文学館(ことはらんど)の1階フロアにて開催します。レイモンド・カーヴァー「でぶ」の朗読の後、1時間ほどのディスカッションを予定しています。

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風邪をひくと喘息が出るのであなどれないのですが、今回は意外とあとをひかずに1日寝たらほぼ回復したみたいです。回復するとなんてことないのですが、寝込んでいるときは苦しくて、すごく不安になってしまいます。当たり前ですが頭痛がひどくて文字が全然頭に入ってきません。

と言いつつ、矛盾するようですが退屈でもあって、夫が「これ、面白いよ、リアリズム」と置いていったマンガを手にとりました。普段ならたぶん読まないような気がしますが、というか私は実はあまりマンガを読まないんですが、絵があれば頭に入るかもしれないと藁にもすがる気持ちで手にとりました。

ヤンデレ夫婦漫画』なんですが、ヤンデレっていまいちわからないし。読み始めてやっぱり意味がわからないよと諦めようとして……え、これ、なんか違うんじゃない?何代かにわたる家族の回復というか、再生の物語なんです。これは確かにリアリズム。現代は、こういう重いテーマもさりげなく明るく表現してしまうんだなぁとカルチャーショックでした。ヒロインの絵は200パーセント美化しているんだとか。すごいっ。

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それから、手を伸ばして届いたのが、先日のポエケットで白井明大さんのブースで買った『貘集 山之口貘詩撰集』です。何人かの撰者がコメントを寄せています。私は貘さんの詩は大好きですが、風邪をひいて頭が回っていなくても入ってくる詩なのだと再認識。

最初は「数学」というタイトルの詩。第一連だけ紹介しますけど。

 安いめし屋であるとおもひながら腰を下ろしてゐると 側にゐた青年がこちらを振り向いたのである 青年は僕に酒をすすめながら言ふのである

 アナキストですか

 さあ! と言ふと

 コムミユニストですか

 さあ! と言ふと

 ナンですか

 なんですか! と言ふと

 あつちへ向き直る

 この青年もまた人間なのか! まるで僕までが なにかでなくてはならないものであるかのように なんですかと僕に言つたつて 既に生まれてしまふた僕なんだから

 僕なんです

当たり前です、その通りです、と思います。

この詩に撰者の宮城隆尋氏は「大量消費社会の中でテレビと漫画に育てられた世代の眼前には、いかにして疑似的な感覚から抜け出し、切実な自己に出会えるかという問題が大きく横たわっている」と。

そうなんですねぇ…。