物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

物語のかたちをした考え

夏休み企画ということで、イスラエルの作家エトガル・ケレット『クレネルのサマーキャンプ』(母袋夏生訳 河出書房新社 2018)に収録されている「物語のかたちをした考え」の読書会をしました。他の作品にも戦争の影がありますが、この3ページの足らずの寓話にも悲しみや怒りがあるように思われます。

かつて月には大勢の人々が暮らしていました。月の住人たちは自分の考えをオリジナルの形で表現することができ、それを大変誇りに思っていたのです。ところが、ときを経て自分の考えをどういう形で表現したら良いかという定型が生まれ、その規則を正しく守るようになっていきます。

ところがある時、そこにただひとりだけ自分の考えを他の人たちとは違う形で表現する若者があらわれました。彼は宇宙船をつくって宇宙を旅し、ユニークな考えを収集しよう夢みます。

人々は驚き、また彼への憐憫を感じて、若者が眠っている間にほとんど完成していた宇宙船を壊してしまいます。代わりに定型の形のいくつかを「愛犬の死を悼んでかける刺繍入りのテーブルクロスのかたちをしたかなしみ」にくるんでおくのです…。

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読書会は20代の参加者の方々もいて、世代間のコミュニケーション法のギャップについてなども話しました。表現法が違っていると、伝えたいことも伝わりません。他人事ではないですね。