物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

抒情文芸「蟻んこ」

「抒情文芸」2019年秋(第172号)が送られてきました。

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今回投稿したのは「蟻んこ」という短編小説。女の子の虐待を描いたものです。なかなか暗い作品で、これ、私にとっては新境地かもしれません。

具体的な場面としてはすべて想像によるフィクション。でも、昔の自分の体験を別の形に置き換えたものとも言えて思い入れがあったので、掲載されて大変嬉しかった。救われたような気がしました。

これを書いているときに、みずたまさんに誘われて新国立美術館のクリスチャン・ボルタンスキー展を観に行ったのですよね。フランスの現代アートを代表するボルタンスキーの50年間の軌跡をたどる展示。最初にあった嘔吐する人の映像などが自分の中にあった記憶を良い意味で刺激してくれました。

会場はすごくきれいなんですけれど、これはホロコーストで亡くなった人々の着ていた衣服を思わせる上着でできたぼた山。

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ボルタンスキーは1944年生まれなのでご自身の記憶にはないでしょうが身内から聞いたナチス占領下の出来事がトラウマになって作品に影響しているそうです。回顧展で流れていたインタビュービデオでトラウマが表現の核になるという話になるほどと思ったのでした。

アートや文学というのは正しさを証明したり説明したりするものではなく、作者の体を通して現実がまっすぐ表現されていることが必要なのではないですかね。暗いものやマイナスのものであっても、そこに作者にとっての嘘がなければ、鑑賞する人にとっては有意義な体験になるのではないかと。

未来を想像するときのひとつの足がかりになるわけですから。

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