物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

村上春樹「ドライブ・マイ・カー」読書会

暮れから年始にかけて忙しすぎて、12月の読書会の報告をしないままになっていました。申し訳ないですm(__)m

さすがに映画にもなった、それも村上春樹の「ドライブ・マイ・カー」をとりあげましたので、実は大盛況でした。この日、久しぶりに来られたかた、男性参加者もおり、それぞれの立場から様々な意見が出ました。皆さん、深く読み込まれていたようでした。

この短編は『女のいない男たち』に収録されている連作短編の最初の作品です。後に続く作品とそれぞれ繋がりつつ、構造がかなりしっかり啓作されていることもあると思います。だから、映画ではこの作品のタイトルになっているのでしょうね。

ちょっと聞くとばらばらの感想、対立するのではないかという解釈が多々ありましたが、複雑なパズルをみんなで知恵を出し合って少しずつ組み立てていくように、皆の言葉をつなげていくと次第にひとつの形が見えてくる現象がありました。これぞ読書会の醍醐味だなぁと久しぶりに実感しました。

その直後、私は映画『ドライブ・マイ・カー』を観に行ったのですが、この連作短編集をおそらく深読みして更に先に、戦闘的に進もうとしているのだろう監督の描き方にたまげてしまいました。

読書会と映画、かなり刺激的で楽しめました(^O^)

 

【今後の読書会の予定】

1/28ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

2/25志賀直哉『流行感冒

3/25石沢麻依『貝に続く場所にて』

4/22姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』

ティム・オブライエンドストエフスキーなど続きます。

 

読書会の方法…「目の見えない人は世界をどう見ているか」伊藤亜紗(光文社新書)

「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(伊藤亜紗著/光文社新書

この本は出版されたときに読んで感銘を受け、目の見えない人と一緒にダンス公演を鑑賞したり、関連の講習会を受けたり、各種ワークショップをやってみたりとかなり色々なことをやるきっかけになったのです。それなのに、今回再読して初めてハッと気づきました。

なんで以前は思わなかったのでしょうね”(-“”-)”

ここで紹介されている目の見えない人と見える人が一緒に美術館でアート作品を鑑賞するという行為は、読書会そのものなのですよ。愕然としました。

本の中で直接語られているのは第4章「言葉」他人の目でみる、というところです。

この見えない人と見える人が一緒に美術鑑賞するというワークショップのやり方はだいたいこんなふうに説明されています。

・見える人は2つのことを言葉にします。

  • 見えているもの(客観的な情報)
  • 見えていないもの(印象や思いついた事柄や個人的な経験など)

・見えない人は質問し、自分で考えて意見も言います。

・見える人も見えない人も、自分の身に引き寄せて考えた事柄やはっきりしない印象などを丁寧に言葉にしていき、それらをつなげていきます。そうやって皆で一緒に作品の解釈を練り上げていきます。

これは他人の目でものを見る技術であり、お互いの違いこそ生きてくるのだと。

なるほど!と思いました。違いがあることで、見えない人がいるグループトークが面白くなるわけです。

この本で紹介される見えない人の特殊能力で印象的なのは、世界を基本的に三次元で把握しているということです。そんなの、見える人だってそうだよと思いがちですが、視点を持っているとどうしても写真のように平面で考えてしまいがちなことに気づきました。たとえば、富士山に対して持っているイメージです。見える人が平面的な三角形であるのに対して、見えない人は立体の円錐形であるのだと。

これ、あれこれ考えてみると思っていたよりずっと大きな違いなのです。

 

というわけで、実験的に見えない人と一緒に鑑賞するワークショップをやってみました。見えない人が立体把握しているらしいので、それを最大限生かそうと鑑賞するものは立体にしてみました。

見えない人役の人にはアイマスクをしてもらってから、ポップな立体オブジェを設置しました。じゃーん!

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アイマスクをつけて体験した人の感想を紹介します。

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「んん? なんだコレ」

「これは立方体ですね。それに脚が生えてる。三本」

「木の脚だね」

「古いブラウン管テレビのような感じですか?」私が質問する。闇の中で、すでにぼんやりと像が浮かんでいる。

「いや、えっとね、立方体なんだけれども、その尖ったところが上と下になっているんですよ」

頭の中で立方体の像が瞬時に半回転する。

「なるほど。じゃあ足は立方体の下の面か辺の部分から突き出してるってことですか?」また質問してみる。

「辺からです」

「上の三つの面には星型、丸、三角の窓のような穴があって、そこから何か飛び出していますね」

「にょろにょろした感じ。柔らかそうな白いものですね。生き物かな」

「で、そういう立方体が三つあるんですよ」

「ええ?」脳内の像がいきなり分身する。

「一つは倒れていて、残りの二つはちゃんと脚で立っています」

「それからその三つの周りに何か蛹のようなものがいくつもいくつも転がっています」

「それは白いんですか?」

「白いのもあるけれど、まだら模様のやつもあります。まだら模様のやつは全体がまだら模様というのじゃなく尖った部分なんかが部分的に淡い色でマーブリングされてるような」

「病気みたいだね」

「不時着した宇宙船なんじゃないですか」私も意見を出す。段々と《みえて》くる。

「例えばですけどね、宇宙船が別の星に不時着して、でもその宇宙船には病原体が付着していてその星の生物の蛹に感染してしまっているとか。それでにょろにょろたちが宇宙船の様子を調査しに行ってるのかな」自分でも驚くほど言葉が出てくる。

「ちょうどはやぶさに積まれたミネルバという小さい人工衛星をイメージしているんですけれどね。その棒、或いは針のような三本の脚が振動しながら重力の小さな星の上を飛び跳ねて進むんですよ」想像が止まらない。

見えないと、ものに対して脈絡を見つけようとする。結果として、見えているときには見えないものが見えてくる。見えているという安心感で見過ごしてきたものがよく《みえる》。

 

読書会って、本当にこういうものだと思います。

彼女は頭が悪いから

先日、姫野カオルコさんの小説「彼女は頭が悪いから」を読みました。
どこかでこの本を紹介する文章を読んだのと、嗅覚的に今読むべき本だというのが伝わってきたから。
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この本が話題になっていた時期……小説の題材となった2016年の東大誕生日研究会レイプ事件(実はレイプではないけど)にゾッとしたし、その反響にも関わりたくなく避けていました。

…ということは、やはり内容を予測していたのでしょうね。

そうですね。
読めば、思った通りでした。

このまま行くと結末はどうなるんだろうと気持ちが暗くなりましたが、ラストの思ったより明るめの空気感に救われました。
問題を明確にすることは、やはり解決ヘ向けての大きな一歩ですね。

最初にも言いましたが、小説というのは不思議なもので、その時々の自身の問題や悩みを解決するヒントが隠されています。
丹念に読めば、実際に困っている事柄を分析する手がかりがいくつも発見できます。

この小説が扱っているのは、簡単に言うとパワーハラスメントだと思うのですよね。人間関係における不条理な格差による実害。

私事で考えれば、職場の問題や過去の友人とのトラブルに関連しているように思われました。
そして何より、重ねてヒリヒリと痛みを覚えるのは、現在進行形の弟とのコミュニケーション不全です。

子ども時代はいつも世話して連れ歩いていた年の離れた弟が、現在、常に悪意をもって、上から目線で接してくる気持ちがわかりません。
いや、原因はあるし理解できなくもないのですが、そこをきれいに封じて見ないで平気なことが不可解です。

かつて、女には学歴は不要としつこく唱え続けた両親も、男の子の教育にはひどく熱心でした。
非常な努力をして弟は偏差値の高い大学を出ています。
それによって切り捨てたことは諸々あったでしょうが、その行為はそこまで人格を変えてしまうのでしょうか?

それで、幸せなのでしょうか?
考えるためにも、読書会で取り上げてみたい1冊です。

野外美術展と「JR上野駅公園口」読書会

次の読書会の課題本は、柳美里さん「JR上野駅公園口」です。
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11月26日(金)13時半より町田市民フォーラム3階多目的室にて、会費は500円です。

午前10時からはリフレッシュお茶会(お茶は持参してくださいm(_ _)m)もあります。こちらは無料です。

よろしくお願いしまーす。

先日はメンバーの野外美術展に行ってきました。屋外は安心だし、とても気持ち良かったです。
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メンバー立川さんの作品です(↑↓)
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「夜の靴」読書会

読書には良い季節になってきたのではないでしょうか😃
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横光利一「夜の靴」皆さん全集を図書館で借りたり、青空文庫を利用したり、手に入れにくく苦労されたかもしれません。でも、別の読書会で読んだときに購入していたかたもいました。

今回少し違ったメンバーの組み合わせで行われたせいか、物語が違って見えてくる読書会の醍醐味もあったかと。
本作は、戦後すぐの疎開地山形で始まる作家自身のリアルな日記を下敷きにした小説。作者が言うようにいくつもの短編小説を集めたようなボリュームがあり、様々な情報が溢れており、切り口によって色々な話をすることができました。
どちらかというと戦争のカラーに染まっていた作家が世界の反転の衝撃を農村で受け止めつつ、作家の本能である観察を淡々と続ける。
現在のコロナ禍とも重なる、世界の変化を乗り越えるときのヒントが隠されているようにも思いました。

MINAMATA

読書会で石牟礼道子さんの「苦海浄土」を読んだこともあり、ジョニー・デップ主演の映画「MINAMATA」を見てきました。

読書会の前にユージン・スミスの同タイトルの写真集も手にとり、どの写真も独特な美しさがあって魅せられたのを覚えています。

予告編を見ても、これは絶対に面白いだろうなとは思っていましたが、最初からぐいぐいと物語に引き込まれ、フォトジャーナリストという表現者ユージンという人間に吞み込まれていました。本当に、人間は仲間と共に生きるものなのだと感じられた映画でした。とても良かったです。

物語の骨格や物事が起こる動機付けがしっかりしているからなのでしょう。考える間もなくラスト。呆然としているうちにエンドロールも坂本龍一の音楽も終わっていました。勉強になりました。

それと、ジョニー・デップが私がイメージしていたユージン・スミスにあまりにそっくりだったこともこの映画の醍醐味。似すぎてます。

左が映画のパンフで、右は今読み終えたユージン・スミスの伝記です。この伝記も筋金入りで、児童書ですが大人も楽しめます。

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これは、ジョニーかユージンか?

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伝記の裏表紙のユージンです。

ラインスタンプ

最近急に思いたって、ラインスタンプを作るようになりました。作るときと作らないときのむらがあります。たぶん小説に行き詰まったときにスタンプを作ると気分転換になるのかな。先日ここに載せた写真を使ったものもあります。
そのうち、読書会仕様のスタンプも作ってみようかなぁ。

[実感のある気持ち]
https://line.me/S/sticker/16714315/?lang=ja&utm_source=gnsh_stickerDetail

[ナチュラルでちょっとボーイッシュ]
https://line.me/S/sticker/16889444/?lang=ja&utm_source=gnsh_stickerDetail

[前向きな羊の坊や]
https://line.me/S/sticker/16763777/?lang=ja&utm_source=gnsh_stickerDetail