物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

神なき時代の、愛なき世界に、愛の国はあるか?

この土日、地元のお祭りでした。

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その、人がいっぱいの賑やかな駅前通りのカフェで、プー子さんに借りた中山可穂『愛の国』の後半部を読みました。8年ぶりの新作で、かなりの力作です。近未来小説で、日本でせ同性愛者が弾圧されて収容所に入れられる世界が描かれていて、結構怖い。

怖いのは、ジョージ・オーウェルの『一九八四』を思い出してしまうからかも。と思っていたら、「ファシズムとは人間の顔を何度も何度も靴で踏みつけるものであると、ジョージ・オーウェルは言っています」という演説文も出てきました。

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ただ、読んでいて負担に思う表現が少ないし、同性愛者をここまで弾圧するってありえないだろうなと思っているので、安心して楽しめるエンターテイメント小説でもあります。

でも、ちょっと設定が変わればあり得るのかなという気はしてくるんですよ。主人公を乗せるタクシーの運転手さんが「そのうちに矛先がタクシー運転手に向くんやないかって、みんな冗談言うてますわ」なんて冗談に言ってるようにね。世の中、群集心理がどんどん強くなっているしね。

それだけではなくて、何か気になる暗さがあって、弱った息遣いも感じられて、ちょっと作家のことが心配になりました。と言うより、同じようなものが自分にもあって共感してしまうのかもしれません。

そんなわけで、この小説を読んでもっとも印象的だったのは、実は、仏教とキリスト教の共通項がやんわりと語られているところでした。主人公は四国でお遍路をしたり、スペインで巡礼の旅をする場面があるのです。両者、周囲の人々が親切にしてくれるのも、似ているなぁと思いました。

やっぱり、他人を上から目線で見下すのではなく、謙虚に自分の道を歩くことが大事ですよ。そして、そういう人には親切にすべきだと思うし。

特に、巡礼の様子と過去の出来事とが交互に書かれているところが、少しずつ病が回復していくような心地よさがあって良かったなぁ。

ずっと悩まされていた耳鳴りが少しずつ癒えていく感じさえしました。