物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

テント芝居

昨日は用事があって御茶ノ水に行ったついでに散歩していて、湯島聖堂の前を通ったので、ふと中に入ってみました。

外とは違う静謐な空気が流れているなぁと思いました。そういえば、20代の頃、ここでテント芝居を見たことがあったことを突然思い出しました。芝居の内容は忘れてしまったけれど、芝居がここの空気と作用して妙に興奮した精神状態は、まるで昨日のことのよう。

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 20代の終わりまで舞台照明の設備会社で働いていましたので、あちこちの劇場の演劇やら、東京ドームのマイケル・ジャクソンのコンサートまで行きましたが、かえって照明とはあまり関係ないテント芝居に魅せられたものでした。

最初に見たのは、不忍池の上に舞台を設置した新宿梁山泊の「人魚伝説」だったと思います。たまたま近くを歩いていて、チラシをもらったのがきっかけ。そのあと、日暮里の銭湯でやっていた第七病棟の芝居も見ましたっけ。

池袋の鬼子母神でやっていた東京アンダーグラウンドという小さな劇団の芝居には3、4度行ったと思います。最初、違う名前だった時からです。私はあちこちうろうろ歩く癖があって、やはりチラシをもらったのでした。

暴力シーンの多い芝居で、ものすごく迫力がありましたっけ。私は全然暴力と無縁の人間ですが、内面にはそういう面も隠されていて、芝居を見るってそういうものを昇華するところがあるんだなぁと思ったものでした。

その東京アンダーグラウンドの脚本・演出・出演していた乾緑郎さんの「海鳥の眠るホテル」という小説を先週末読みました。何人かの登場人物の視点で別々に物語が進んでいくのですが、だんだんとその人たちの関係が見えてきて絡まっていくという手法。

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それぞれの登場人物を丁寧に描き分けているだけでなく、時間軸でそれぞれが変化して絡み合っていく様子が執拗に描かれていて、昔見た東京アンダーグラウンドの芝居の空気を思い出しました。内容は忘れてしまったけれど、こういう空気だったなぁと。

特に、主人公の30歳の女性の視点がとてもリアルで驚きました。女性の陥りやすい落とし穴、能力も高いし、表面的には溌剌しているのに、どこかに自信のなさを隠している。自分ではぬかりないつもりなのに、おそろしく防御のゆるいところがある。自己認識がずれてしまっている。

考えさせられました。