物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

「おおガラス」「あまりもの」

先月末の読書会のことを書こうという気力が、このところ、毎晩萎えてしまって。相模原の事件のダメージでしょうか…。どうして人間がそんなふうになってしまうのか…と。

これだけ情報が多いと自分に都合のよい情報はどこかしらにあるもので、それを勝手に都合よく解釈して、自分を正当化してしまうことは、誰にもあるものです。できるだけ間違った方向に行かないように、現実を読み解くために読書会をやっているという側面もあるのかなぁ…としみじみ。

 

というわけで、先週金曜日の読書会の報告を少しだけ。

大人向け〈ささやかだけれど役にたつ読書会〉は、中国系アメリカ人の作家イーユン・リー氏の短編「あまりもの」を読みました。

北京の工場で働いていた51歳のリンばあさんは、無理をしないでどこまでも流されていきながら、反面したたかに窮地をすりぬけていきます。そんな生活の中、愛や恋に関わっている余裕はありませんが、本物の愛や恋は敷居が高くても、ちょっとしたその代用を見つけてしまいます。

この人自身の行動にはあまり飛躍がないのですが、周囲の人々の行動によって流されて、つまり、周囲の人々のエネルギーを借りて、飛躍するのかな。

この感覚は、日本人にも共感できそうですし、日本人に多いような気がしますが。それに、これはこれで、ある意味、本物なのか? 少なくとも、肯定的に考えていいのではないか? みたいな話になりました。

 

午前中の子どもの本の読書会は、今年の2月に84歳で亡くなられた井上洋介氏の絵本をとりあげました。誰もが知っている図柄。「くまの子ウーフ」の挿絵をはじめたくさんの絵本を、あまり意識せずに当たり前に手にとってきましたが、みんなで持ち寄った絵本を並べてみると、気づくことがあれこれ。

私は、もっと若いかただと勘違いしていたのですが、少年時代に戦争を体験しているらしく、東京大空襲の後、焼け出された人々が千葉方面に逃げていくのを見たのだとか。街に描かれる陰影にいまさらながら気づかされます。マンガ、油絵、アングラ芝居との出会い、あらためて井上氏は戦後アヴァンギャルドの人だったのだと思いました。

面白かったのが『おおガラス』という、井上氏が文章もつけたものとしては珍しストーリーのある絵本。と言っても、「おおガラスが とぶので ぼくも おさんぽに でかけました」と奇妙なきっかけから物語が始まります。これ、挿絵も含めて詩のようにも読めました。

あ、この絵本です。

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隣にあるのは、沖縄の芥田川賞作家、大城立裕氏の短編集『レールの向こう』です。

ここ2、3日読んでいた本です。90歳になる頃に書かれた作品とはとても思ないシャープさですが、やはり90歳に近いということがリアルに感じられ、色々考えさせられました。