物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

「犬たち 現代の動物寓話集」

前回の流動的読書会で本谷有希子「犬たち」をとりあげて、若い方々と色々お話したのは妙に印象に残りました。たぶん、40代から50代の私たちのとらえ方と少々違っていたからではないかと。

この物語、人嫌いで町の人々とは距離をとるのに、無数の真っ白な犬たちには親近感を持ってとけ込んでいく女性が主人公です。

それを肯定的にとらえるにしても、否定的にとらえるにしても、高校生から二十歳過ぎの人たちはポジティブなのです。だからこそ、これは最後まで徹底的に書かれたものではなくて途中なんだね、と気づき、途中までというのが大事なのかも、という結論に至り、最後の1行はなくてもいいかも、というとんでもない意見まで出たのですよね。そんなことを言えるのも、すごいなぁと思いました。

で、思い出したのが、レベッカ・ブラウンの「犬たち」(柴田元幸訳)です。The Dogsというタイトルに、A Modern Bestary(現代の動物寓話集)というサブタイトルがついています。

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実は、出版された当時(2009年)に一度読んだのですが、かなり過激にびっくりして内容が今ひとつわからなかったのです。でも、本谷氏の「犬たち」を読んだら、なんとなくわかるような気がしてきました。再読してみたら…やはり。

もしかしたら、これは同じテーマなのではないかな。本谷氏の物語をもっと徹底的に最後まで書いてしまうとこうなるのかもしれません。大掛かりな再生。つまり、やわやわの幼虫が蛹というかっちりした形に固まり、実は中身がどろどろに溶けていて、全く違う生き物=大人になるというような。

大人になるというのは、現代、とても難しいことなのかもしれないなと思います。

山田詠美「蝶々の纏足」も昔読んで読んでピンとこなかったのですが、

(↘異類婚姻譚 - 物語とワークショップ

レベッカ・ブラウン「パン」を読んだら、なるほどとわかってきたような気がしたんです。「パン」だけ読んだらわからなかったかもしれないのですが、「蝶々の纏足」を読んだことが足がかりになったよう。やはり同じテーマ、徹底的に書くと「パン」になるのではないかと。いや、一歩進めると「パン」になるのかもしれません。

この「パン」は、12月16日 (金)の読書会でとりあげる予定です。この読書会は午後3時半から5時半まで、場所は町田市民フォーラム3階多目的室です。

次回の流動的読書会も12月16日 (金)、夜6時からあります。場所は町田市文学館ことばらんどの1階奥のテーブルです。とりあげるのはドクター・スース「きみの行く道」という絵本。扉に「子どもから大人まで年齢を問わずこれから新しい人生にふみだそうとするすべての人に、贈る本」と描いてある、世代を超えるミリオンセラーとなった本です。

大人になるというのは、現代、やはり難しいことなのでしょうね。