物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

デンドロカカリヤ

若者たちの流動的読書会で、安倍公房「デンドロカカリヤ」について語り合いました。ずっと以前にも大人たちの読書会でとりあげた作品ですが、そのときよりもずっと深いところまで潜っていきました。また、若者の前向きな読み方に教えられるところもありました。とても面白かったです。

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たとえば、まず主人公のコモン君が個人的な植物化と闘っていきながら、それが自分だけでなく社会の問題だと気がつく物語だというはっきりした認識を持っていることにびっくりしました。(大人の読書会ではそう思わない人が多かったので。)

それでも、この物語から前向きに何かを学びとろうとするのです。

1つめ。闘うときの注意点として一人ではなく、仲間と手をつながなければいけないこと。

2つめ。感覚器官を鋭くして自分の外側の世界をよく見て、よく聞き、よく読むこと。

3つめ。自分自身については一番危険なのは社会と直に接している「顔」であり、頼りになるのは手であり足である。確かに、最初に植物化をするのは顔なんですね。裏返ったり、はげかかったり。

4つめ。これは私には盲点でしたが、恋愛すること。コモン君が一番元気だったのは、彼女の影が見えているときでしたっけ。

やはり若い人は冴えているんだなぁ…。というか、若い頃のことはやっぱり忘れてしまうんじゃないかなと実感。

今回の読書会、私はもっとソフトな作品を考えていたのですが、若者たちの希望でコマの作品になりました。

(最初、カフカの「掟の門」と言われ、初めて来るかたに朗読を聞いて参加してもらうには、もう少し具体性のあるもののほうが…とお願いし「デンドロカカリヤ」に。)

高校生の読書会でも、小学生の絵本の読み聞かせでも、大人の感覚で甘口のものばかり選ぶと、子どもたちの読書離れを助長してしまうというのはいつも実感します。大人はなかなか自分が頭の回転が鈍くなっていることを自覚できないので、つい上から目線になってしまうのですよね。自分の若い頃を考えたって、今よりがんばって難解な本を読んでいましたよね。