物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

ライオン――25年目のただいま

忙しさにかまけているうちにどんどん日が過ぎて行ってしまいます。恐ろしい……。

書こうと思って書いていなかったことを。

これからの時代、世界に通用する思考力をつけることが教育では大事なんだろうねぇと息子としゃべっていたところ、彼が言うには「思考力をけるには、子どものうちに思い切り自由に遊ぶことで、中学生以降は読書だよね」と。確かにそうなんですが、そういうことって、経験がない人にはわからないし、経験があってもある閾値に達していないとわからないのかもしれません。

読書会の効果は絶大だと思うのですが、まあ、そんなことは誰も言いません。学校教育ではノウハウを学んで、正解を求めることばかりしているので、読書会でも、人によっての読み方の違いを楽しむことがなかなかできません。ついノウハウを学んでしまうのでしょう。ノウハウを学ぶから思考力が育たないんですが……。

そんなことを考えていた先週末、ふと思い立ってひとりで映画に行きました。実話をもとに映画化した「ライオン――25年目のただいま」という作品。インドで5歳のときに迷子になったサルーはオーストラリアに養子にもらわれていって成長するのですが、立派な若者になってから突然、忘れていた過去を思い出すのです。

↓こんな写真しかありません。ぎりぎりで入れました。満席でした。

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実話だからというわけではなく、長く生きてくると過去のちょっとした事柄がその後の人生を大きく変えていくということを幾度か経験しているので、心揺さぶられてしまうのかもしれません。自分のこととして想像してしまうのです。また、幼い少年の前向きさが伝わってきて、なんとも懐かしい気持ちになります。

小さな子どもにとって、迷子になるというのは明らかに不運なことです。それも、うっかり回送列車に何日も閉じ込められてしまい、言葉の通じない街まで行ってしまうのです。一歩間違えればどれほどひどいことに巻き込まれるかわかりません。

でも、そこで彼がどういう行動をとっていくのかというところが見どころだと思いました。彼は素直で、どこまでも前向きなのです。自分自身を信頼しているので、常に自分で考え、最善の選択ができるのです。

そのへんはかなり細部までうまく描かれていました。彼の心持ち、彼が何を大事にし、何を基準に判断しているか。たぶん、彼はどんな環境でもサバイブできる可能性が高かったのだと思います。

結局、思考力って、こういうことなのではないかと思いました。

実の母、育ての親に対して持っている彼の深い愛情にもグッときてしまいました。それはもう、愛されるはずですよね。そして、周囲の人や身近な物事に対しての愛情こそが世界と関わりながら問題解決していくための思考力の源ではないでしょうか。