物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

秋の気分転換

コロナ禍だからというのではないでしょうけれど、秋の深まりというのはあっという間ですね。
この季節の物悲しさが私は昔から苦手で、うつになったり喘息になったりしていたものでした。今はいたって元気ですけれど(マスクをしていると風邪もひきませんね)なんとか気分転換しなければ…と焦ります。
先日は急に思い立って、西洋美術館のロンドンナショナルギャラリー展に行ってきました。展覧会に興味があったというよりはお馴染みの美術館に行きたかったのかも。
常設展の方が空いてもいたので、むしろそちらをゆっくり鑑賞しました。そうそう、中学生の頃に夏休みの宿題で常設展の絵のレポートを書くというのがありました。当時の私はクールベにひかれたのですよね。そのあと、好きな絵はどんどん変わりましたけど。
今回印象に残ったのは、やはり第二次大戦の際に上半分が損傷したというモネの睡蓮の大作。実物の、その痛々しさがじんじんきました。
そういうの、今はきちんと感じることができるかもしれません。そして、感じられるというのはやはりとても癒されるということにもなるのですよね。
外は雨がぱらついてましたよ。
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もうひとつ紹介したいのは、気分転換として読んでいる本。以前、「ピッピのくつした」で特集したこともあるジョン・グローリー『エンジン・サマー』です。
これ、かなり奇想天外な構造を持った物語なので、冒頭の若い男女の会話の意味がわからず、SFオタク的な作品かと本を閉じてしまう人が多いかもしれません。でも、実はリアリティーに満ちた純文学的作品です。この会話の意味も最後にわかりますし。
描かれているのは、文明が滅びた後の世界で、残された人間たちがどう生活するかということ。この人々の生活が味わい深いのです。まるでドラッグ。実際、皆がパイプに詰めて吸う、泡を吹く宇宙植物も出てきます。
そして、物語というものの意味を考えていく構造になっています。語り手の少年ラッシュ・ザット・スピークス〈しゃべる灯心草〉は真実の語りを物語るのです。
…と言うと、また何やら怪しげですが、作者は小説を書くということはどういうことかと考えながら書いているのではないかな。
ストーリーだけを追う物語ではなく、その背後に世界は黒々と広がっています。植物が生い茂っています。だから、ちょっと読みにくいですけどね。
文明はどうやらかなり複雑な事情で滅びた。とにかく人類が克服したと思われていたいくつもの災禍によって人口が減っていったことがあるようです。もうひとつ、生殖能力をコントロールすることに成功していたので、簡単に子孫を残せなくなっていたこともあったと。
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この本、読むのは3回か4回目ですが、今回が一番じっくり味わえているような。