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物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

おやつ

喘息 本の紹介

喘息発作から一週間が過ぎました。回復はしましたが、急に寒くなったせいもあって、気管支は好調とは言えません。喘息発作が余程のダメージだったのか、食いしん坊の私が、あまり食べられない状態のままです(と言っても、そろそろ体重は戻りつつありますが…)。

先週のことですが、やっと外出できた嬉しさに、ついケーキセットを頼んでしまったんです。普段、食べたくてもお金がもったいなくて我慢しているのに、今は栄養をつけなきゃ、とちょっと気が大きくなった。ところが、ひとくち食べて、ガーン。何やら味のないおからでも食べているよう。味が不明瞭で少しもおいしくない。2時間かかって、そうとう無理して食べました。なんという無駄な苦労…。それに、余計にストレスがたまる…。

ところで、私が小説を好きなわけは、実際に体験する以上に楽しめるからというのがあるんです。以前も書いたけれど、私は幼い頃に父に読み聞かせをしてもらっていたので、確かに想像力たくましい子どもでした。お腹が空くと、あれこれ食べる想像をして、本物よりおいしく感じたりして、満足(我慢)していました。

なんで急にそんなことを思い出したのかわかりませんが、想像で食べたらおいしいかなぁと思いついたわけです。具合が悪くて食べられなくても、どうしても食べたいという意地汚さは変わりません。

で、読んだのが『アンソロジー おやつ』(PARCO出版 2014)です。

昔の人から今の人まで色々なタイプの方々が書いた〈おやつ〉をテーマにした短いエッセイ集。まず、1889年生まれの内田百閒の筆によるシュークリームの話には、なんともたまらないおいしさを感じました。

他にも色々な方が、アップルパイやら今川焼きやらドーナツやらのことを書いているのですが、その視点によって、伝わってくることはこうも違うのかと意外でしたね。なんだろう、だいたいにおいて、戦前の話に出てくるものが、その熱い思いのせいなのか、話術が生きていた時代のせいなのか、本当においしそうなのです。あと、真ん中頃に載っている村上春樹氏は、やはり文章がうまいなぁと感心してしまいました。

そして、ラストは尾辻克彦氏の「チョコボール」というお話。読んでいて、おや、と思いました。これは、もちろんエッセイですので尾辻氏19歳頃の実話を44歳のときに書いたものです。フィクションではありません。

おや、と思ったのは、タイトルからは想像できない、お友だちとパン屋を襲撃する話だったからです。つまり、パン屋でパンと一緒にチョコボールを持ってきちゃうんですけどね。この設定に、最近読んだ村上春樹氏「パン屋再襲撃」を思い出したのです。

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ただ、「チョコボール」は正確にはパン屋を襲撃したわけではなくて、結果としてパンを盗むしかなかった話なんですけどね。村上春樹パン屋再襲撃」は、パン屋を襲撃してパンを盗もうとしたのに、盗めなかった話でした。逆なんです。どっちも青年期の過剰な感情を抱えているのだとは思うんだけれど、逆設定のせいで、物語のその後が大きく変わっていく。…というふうに感じられた。

チョコボール」はエッセイなので、その結果どうなったかというところまで書かれています。でも、「パン屋再襲撃」は書かれていなくて、そこが怖いんだなぁと思いました。つまり、盗めなかったから、30歳近くなって再襲撃してしまうんですよね。30になって10代と同じことをしたら、その結果はどうなるのだろう…と。