物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

ウラジーミル・ソローキン

この秋にに翻訳出版されたばかりのウラジーミル・ソローキンの『親衛隊士の日』を読みました。本の装丁も帯もすごすぎ!と思ったんですけど、中身が本当にこの通りだったので、もっとびっくり。

今どき、偽表示に慣れてしまっていていけませんね。装丁の力ってすごいなぁとあらためて思いました。こんなですからね。

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専制君主制が復活した近未来2028年のロシアが舞台。赤いメルセデスベンツに乗って移動する親衛隊士(オプリーチニク)に、みんなが道をあける。敬われると同時に忌み嫌われている彼らの仕事は、反抗分子の粛清。貴族の屋敷に押し入るところから、仕事は始まります。

ただ、それだけじゃないんですね。この物語は暗躍するオプリーチニクのひとりコミャーガの目から見たある一日のできごとなのですから。コミャーガにはコミャーガの言い分があって、彼独自のものの見方がある。

彼の個人的な生活や、仲間との結束をかためるための色々な工夫…というかかなり異様な事柄が描かれていきます(金色のお魚による幻覚トリップとか、同性愛的儀式とか)。そのへんがかなり強烈で、装丁や帯からも読みとれるところです。

でも、それも面白おかしくは読めなくて、表面的なストーリーや、政治風刺だけでなく、文学なんだなぁって思います。コミャーガの視点が独特で、何か奥深いものが描かれているなぁと。

そうそう、トルストイドストエフスキーチェーホフの本を暖炉で焼くシーンがあるんですよね。でも、そういう古典文学に対する考えも、人によって違っていて。

あ…なんか、ソローキンの本はあまりにアブノーマルだからか、ロシアで便器に投げ込まれたことがあるんだとか。うーん、まあ、ちょっとわかるような気がします。

ソローキンの『愛』もなかなかすごかったですからね。読んで手をつけていなかった『青い脂』も読んでみようかな。