ヨーロッパ文芸フェスティバル
今月の2日から4日までの3日間ヨーロッパ文芸フェスティバルという催しがあり、仕事を休んで参加してきました。今回は3回目ですが、毎年まったく違う空気感で時代が変化しているのも感じられ、大変刺激的。今年のテーマは壁を壊して架け橋をつくる、ということだったそうです。なかなか海外のことはわからないので、こういう機会は本当に貴重です。勉強になりました。
あまりにプリュームがあって書ききれませんが、少しだけ。
初日はインスティトゥト・セルバンテス東京という会場で、あの『窓から逃げた100歳老人』を書いたスウェーデンのよナス・ヨナソンさんのお話から始まり、北欧諸国の翻訳家の皆さんのパネルティスカッションや、グラフィックノベルをテーマにした話などもありました。「まんが」って日本語で話されてましたけどね。まんがは世界に通じるのですね。
2日目はイタリア文化会館で。リトアニア、ポーランド、日本で調査をしてきたという歴史家のかたの「世界の記憶としての杉原千畝の功績を語り継ぐ」という杉原はヒーローだという熱い話からスタート。私は「半ユダヤ人として、双子として」というタイトルのイゼル・アイヒンガーの話が興味深く、『縛られた男』という本も買ってしまいました。これは読書会でうまく使えたらよいなぁと思っています。
3日目は駐日欧州連合代表部のシューマン講堂で。ちょうどこのとき読んでいたノーベル文学賞を受賞したオルガ・トカルチュクについての話もあり、なるほどと思いました。この作品は深くて重くて、読むのにだいぶ日数がかかりましたよ。それだけ楽しめたということです。
あと、印象に残ったのは、フィンランドの若い女性作家ミーア・カンキマキさんのお話。残念ながらまだ邦訳されていませんが、清少納言について書かれた処女作が有名なようです。読んでみたい。
それから、オーストリアの作家トーマス・シュタングルさんの若い男性介護士の視点で語られた作品の朗読に感銘を受けました。この作品もまだ翻訳されていないそうです。
あまりにボリュームがありすぎてまだまだ未消化です。読んでみたい本もたくさん。今後の読書会に反映させていきたいと思います。
猫のリチャード三世
1日には読書会メンバー東さんの芝居にも行きました。「リチャード三世」というのはもちろんシェークスピアです。ただし、猫なんですね。
リチャード三世と言えばかなり残忍な悪い奴。物語も血みどろのシーンが続きます。
ただ、この芝居を観る前に、私は和光大学の里山アートを見学し、さんざん道に迷って足が棒になっていたところビールなども飲んでしまったので、すっかり気持ち良くなってしまっていました。小さな場所で、猫が演じる設定のお芝居でしたしね。
わーい、東さん、かっこいいー!と最後まで楽しく見てしまいました。
読書会メンバー、色々と表現活動されてますね。
あ、そうだ。野外ライブもあったのですよね。行けなかったー、残念。次回を楽しみにしています。
今後の予定
今月の例会は11月22日(金)場所はいつもの町田市民フォーラム3階 多目的実習室です。
少しずつ寒くなってきましたので、午前中のリフレッシュお茶会(10時~12時 参加費無料)は軽い体操やストレッチなどもして心だけでなく身体もほぐしましょう。
午後のささやかだけれど役にたつ読書会(13時半~15時半 参加費500円)では川上弘美『水声』をとりあげたいと思います。タブーな世界に入って行こうとする小説です。参加するかたはあらかじめ読んできてくださいね。
その後の予定は…
12月20日(金)の午前中のお茶会の途中から、すいとん入りピンクシチューで忘年会を予定しています。血行も良くなるピンクシチューを是非食べに来てくださーい。
読書会でとりあげる本はドストエフスキー『やさしい女』(または『おとなしい女』というタイトルになっている短編)です。
1月24日(金)読書会はチママンダ・ンゴスティ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』(web河出文庫で全文が読めます)の予定です。
最近、私も更年期のせいか血圧やらコレステロール値やらが上がり気味。運動とゆるやかなダイエット。ダイエットと言っても食べる量は減らせなくて、お菓子は半分、肉の代わりに魚を増やし、野菜を今までより多くとるくらいですね。それでも大変。
このひと月で1.5キロくらいなんとか落ちました。若い頃は痩せるのは簡単でしたが、この年になると難しくなるのですね…。
でも、体調はびっくりするほど良くなりましたよ。
「ティファニーで朝食を」読書会
カポーティ「ティファニーで朝食を」の読書会はみんなで深いところまで読むことができたので、そのことを書こうと思っているうちに日がたってしまいました。
言葉にすると薄っぺらくなりそうなのです。天才であるカポーティが奇跡のように描き出した作品を理屈で説明するのは土台無理な話です。
不思議なのは、戦時中のニューヨークの物語の中に、バブル期直前の私自身の、いわゆる青春体験と重なる部分があることです。
小説ってそういうものなのですね。
小説の中でカポーティの分身のような「僕」やバーの店主ジョー・ベルがホリーを思い出すように、今でもそのホリーに似た友人を思い出します。私の人生の分岐点となった時代と場所に大きな存在としていた友人は、その後、小説と同じようにどこかに消えてしまいました。
ホリーに瓜二つの彼女は、やはり尋常でなく人に好かれましたが、非常識で、私の許容範囲を越えていました。
よく彼女にホリーのセリフのような謎めいた言葉をポンと放られ、何の気なくキャッチしていましたが、三十年以上たった今でも思い出すというのは、その答えをずっと考えてきたということなのか…。
小説を読み解くことで、まだ解けていない謎を考える面白さがありました。
今、更年期というまた大きな分岐点にいると、青年期がひどく輝いて見えますね~。
10月25日は読書会です
次の例会は10月25日(金)、場所は町田市民フォーラム3F多目的室です。
午前10時からのお茶会は無料です。お菓子食べながら楽しくおしゃべりしましょう。
最近は情報や話題が多いので、今回はあえてテーマを決めませんので、皆さんそれぞれ話したいことを持ってく来てくださいね。
13時半~15時半は読書会。参加費500円です。
トルーマン・カポーティの「ティファニーで朝食を」を読み解いてみようと思います。映画が有名ですが、小説も面白いですよ。長い作品ですのであらかじめ読んで参加してください。
これは手持ちの村上春樹訳の本です。猫ちゃんが出てきましたっけね。
実は、今日は東大のホームカミングディというのに行ってきました。水餃子を食べたり、図書館見学ツアーに参加したり。
それから、読書会を開催することとも関連があると思いましたので「ことばの危機 入試改革・教育改革を問う」というシンポジウムに参加してきました。
言葉で伝えることは不可能に近い。自分とは違う他者とのコミュニケーションがいかに難しいか、そのコミュニケーションをどこまでも続けていこうというのが文学だという認識に共感しました。困難を乗り越えるために、文学は実用的なものだと思いますね。
読書会はひとつの正解を見つけるものでもありませんし、みんながそれぞれの感想を持てばよいというものでもなければ、誰が一番という順位を決めるものでもありません。
参加者みんながそれぞれの角度から見ていくことでダイナミックな物語のうねりや構造や実際に役立つ重要な情報が読み解けていくものだと思います。みんなで協力し合って読めば、ひとりでは到達しえない深いところまでたどり着けます。
読書会、是非、参加してみてください。
27日のお茶会と読書会、ありがとうございました。
27日の報告をします。
午前中のお茶会。メンバーの近況報告からだいぶ踏み込んだ話になり…そうそう、メンバーがいつもと違ったせいか意外な方向に展開し、広がっていきました。
話題作りに絵本を読もうと思っていたのですが、不思議に最初から関連した話題にもなっていて、教育やアートの話から、化石やロシア料理や海外からの留学生のことなど。最後に読んだ絵本も皆で読むと楽しいものですね。
読書会は安部公房の短編『闖入者』、昭和27年に発表された作品です。
若者が住むアパートの部屋に、突然大家族がぞろぞろやってきてノックします。中に入れしまったのでしょう、そのまま住み着いてしまいます。あろうことか若者よりもアパートの住民たちと仲良くなってしまいます。民主主義の多数決の原理を使う彼らに対し、若者はうまく反論することができません。ガールフレンドまでとられてしまい、どんどんひどいことに…。
戦後入ってきた民主主義の落とし穴について書かれているのではないかという意見から読書会は始まりました。確かに、民主主義を標榜する一家はもっともらしいことを言いますが、何かがおかしい。
そうだとして、若者はどうすれば助かったのか?助かる方法は?
そもそもまずかったのは、若者がアパートの住人と仲良くしていなかったこと。人と繋がることが苦手なのでしょう。簡単に人を信用してはいけないけれども、信用しないと始まらない…。
感想の一部。
「主人公の視点で闖入者のなんと怖いことかと読んでいましたが、すべての闖入者が悪意を持っていたわけではないとの感想にハッとした」
「突破口は相手をよく見ることだった。ただ敵だと思って見ていると何も見つからないけど、敵もすべて同じ考えじゃない。案外敵じゃないのかも」