2013年12月18日東京大学で、2008年にノーベル文学賞を受賞したル・クレジオ氏の講演がありました。雪になるかもと言っていた日です。雨でしたが、整理券をもらうのに外に並んでいて、あわぁさすがにすごいなぁと思いました。…と言いつつ、9番だったので良い席でした。
不思議だったのは、フランス語は全然わからないので同時通訳機を借りたのですけれど、ル・クレジオ氏のしゃべっているのが血の通った言葉だとわかることです。文章を書くときにペンを使って書く方が好きで、それはより現実との接触があるからだとおっしゃっていたんです。そういうことなのかな、と思いました。つまり、現実との接触の多い言葉なのですよね。
タイトルはこのレジュメにあるように「文学創造における記憶と想像力」ということ。講演の内容は、ご先祖の住んでおられたモーリシャスのロドリゲス島を舞台にした4冊『黄金探索者』『ロドリゲス島への旅』『隔離の島』『はじまりの時』を紹介するものでした。
でも、文学にはどういう役割があるか、小説はどのように書くものか、文学とはいったい何なのかというようなことに繰り返し立ち戻って語られていたことにぐっときてしまいました。作家というのは、やはりそこに関心を持つものなんでしょうね。
詩は哲学に近く、小説は罠であるとおっしゃっていたのも印象的でした。読者はとりこまれてしまうということですよね。本当にそうだなぁと思います。そういう小説を読むのは本当に人生を広げる楽しさがあります。
そして、作家の側から見れば、突然のひらめきや感情を世界と分かち合うために書かなければならないのだと。まさにそうだなぁと思って、愕然とてしまいました。書かないわけにはいかないんですよね。大作家になりたいということではなく。