物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

流動的読書会「犬たち」

先週の金曜日、若者中心の〈流動的読書会〉で読んだのは本谷有希子氏の「犬たち」という短編です。『異類婚姻譚』に入っている短編です。

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これ、ピッピのあるメンバーが読んで「え、何これ、わからない」と言い出したことがきっかけで何人かが読み、人嫌いの主人公が犬たちの世界に行ってしまうことに惹かれると言う人と、それは絶対嫌という人といて、どう解釈するのか?という話になっていたのだったと思います。

それを、若者たちはどう読んだかというと…。

最初に朗読した20歳過ぎの女性の意見。

「読書会に来る前の電車で読んだときは、町の人に反感を持ったし、犬の世界に惹かれたんですよ。でも、自分で朗読して耳で聞いていたら情景がものすごくリアルに思い浮かんできて、そうすると犬たちにつきまとわれて気持ち悪いですね。かなり監視されている。主人公は気がついていないみたいだけれど、嫌な感じ」

「町の人間たちにうんざりする気持ちもわかるし、そうすると犬たちの世界に入って安心しているようにも読めるけどね。そんなにいやじゃない。ほっこりという感じに近い」

「町を捨てて犬たちの世界に入るのが悪いとは思わないんだけれど、犬につきまとわれるのが生理的に嫌だなぁと思う」

演劇少年たちの意見もあり。

「情景がくっきりはっきりしていて、舞台の背景を思わせる。作家が劇団の人なんでしょ、町と犬の世界が描き分けられていてやっぱり演劇的だよね~」

「最初は静かな話だと思ったのに、後半どんどん展開して、ラストがいきないホラーでしょ。まあ、それも演劇的と言えるか」

主人公につきまとわっている犬の名前が、パストラミ。主人公が考えた他の名前は使われなかったけれども、これも演劇的な印象の名前でした。

「〈犬たち〉ってタイトルが、何かを暗喩しているように思えるよね。そう、たとえば〈孤独〉とか。でも、犬たちって複数形だから、その孤独がシャープじゃなくて、ぼんやりしている感じなのもリアルだな」

若者たちの話はスピーディに進んで行き、そのぼんやりしてわかりやすくないところがこの小説の優れたところではないかという意見で一致しました。ラストの一文はないほうかいいのではないかという意見まで出て。…って芥川賞受賞した作家の作品なんですけどね。

楽しいひとときでした。