物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

ジュンパ・ラヒリ

  今、ジュンパ・ラヒリの『見知らぬ場所』(小川高義訳 新潮社 2008)を読んでいます。以前話題になって読書会でもとりあげた『停電の夜に』からだいぶ進化していることにびっくりしました。本作はフランク・オコナー賞を満場一致で受賞したそうですが、表題作を読んで、なるほどと唸ってしまいました。それぞれの人物がきっちり描き分けられているので、読み応えがあるんです。

 訳者のあとがきにラヒリが結婚して二児の母になったことが作品に影響しているとあり、そういう生活の変化で女性は変わらないではいられないこと、国が違ってもやっぱり同じなんだなと思いました。子どもを抱えて働くにしても働かないにしても割り切れないあたり、また、年をとった親と同居するかどうか悩むあたりの気持ちもよくわかって、なんだか身につまされます。でも、きっと、そうした実生活のあれこれの迷いも小説の糧になってしまうのでしょうね。書かれた年代順に作風が変わっているのもわかります。

 そうした、国が違っても身近に感じられる普遍的なテーマを扱った短編集ではあるのですけど、同時に遠さ(日本人である私からの距離)も感じました。ジュンパ・ラヒリはアメリカ在住のインド系作家。アメリカとインドの文化の違い、また、その違ったものがどう関わっているのかを読んでいると、それでもアメリカよりインドは近いのかなと感じられますけどね。と言うか、日本が世界の外れかもしれないなぁ。