次の読書会は8月23日(金)13時半〜15時半、今回の課題本はパトリシア・ハイスミスの短編「すっぽん」になります。
(場所は町田市民フォーラム3階 多目的室、参加費500円です。)
この小説、2023年にヴィム・ヴェンダース監督により日本とドイツ合作で作られた役所広司主役の映画『PERFECT DAYS』に引用されています。短編集『11の物語』に収録された短い作品です。
映画『PERFECT DAYS』には、下町の古いアパートから、東京の反対側にある渋谷区の公衆トイレの清掃に通う中年男の日常が描かれています。質素で規則正しく、ほとんど同じ日々の繰り返しです。
しかし、小さな植物を育てたり、木漏れ日を撮影したり、古本屋で買った小説を読んだり、車で東京を縦断する通勤にはカセットテープの音楽も楽しみます。行きつけの店には意中の女性もいます。満たされた日々です。
そこに、母親と喧嘩した少し危うい感じの姪がやってきます。
大人になりつつある彼女は、自分の将来の方向性を決めかねているのです。だから、社会の成功者らしいお金持ちの母親から逃げて、まったく違うタイプの伯父のところにやってくるわけです。
彼女が彼の本棚から選んで読むのが短編集『11の物語』の「すっぽん」です。
高級車で迎えに来た母親(男の妹)と帰る時、姪は「私もビクター(小説の主人公)みたくなっちゃうかも」とささやきます。ビクターが母親にしたようなことを自分も母親にしてしまうかもという意味です。
面白いのは、前回の読書会で取り上げたキノの旅「大人の国」に出てくる時のキノが12歳になる直前でしたが、「すっぽん」の主人公のヴィクターも11歳だということです。大人になる一歩を踏み出す年齢なのでしょうか。
蛇足ですが、前回『キノの旅』「大人の国」とも関連させて個人的な子ども時代の話をすると…
私が友だちとは別に異性をとらえるようになったのが(つまり初恋は)9歳くらいでしたが、10〜11歳の頃は自分の考えを持つようになった時期だったかもしれません。
徐々に作品として絵を描くようになり、物語も書き始めた頃です。ただ、これは急にではなくゆっくり少しずつそうなっていったし、周囲には完全に内緒でした。
それなのに、その頃から周囲に急に変なことを言われ始めて困惑したのを覚えています。
小学4年の終わり頃、アメリカ人とハーフのクラスメイトに「あなたはビッグだよ」と何度も親指を立てられました。まったく意味がわからず彼女から逃げていました。
小学5年になると通知表に「人前で自分自身の考えを堂々と述べている」と書かれていてギョッとしたこともあります。私はかなり内気な子どもだったので、そんなことをするはずがないからです。母に「何言ったの?」と訊かれても「さぁ…?」としか答えられませんでした。
おそらく大した自覚もなく、自分独自の考えがついうっかり口に出てしまうことがあったのでしょうかね。
キノがついうっかり父親に疑問をそのまま素直に言ってしまったあの年頃の感じ、なんとなく懐かしいような気もします。
「すっぽん」のヴィクターもそんな年齢なのだと考えると、この作品の面白さが増すように思います。
読書会ではその「すっぽん」について語り合いますので、よろしくお願い致します。