物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

4.物語の始まり

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  物語には、始まりがあってお終いがあります。物語とは、バラバラの事柄を関連づけて、どこで始まり、どこでお終いなのかを認識することなのではないかと私は思います。ものごとをかたまりで把握できると、その中に意味を見出すことができる。また、そのかたまりをどう解釈し、どう比べるかなどと考えることになります。つまり、物語はものごとを考える基本ではないかと。

 自分が子どもを産んだとき、世界がひっくり返るくらいショックでした。自分が原因で、世の中に人間がひとり増えたということがにわかに信じられませんでした。命が生まれることは最初からわかっていたのに、実物の赤ん坊の重みをずっしり感じ、大音量の泣き声を聞いて、愕然としてしまったんです。未来に続く長い長い時間を一瞬のうちに予感しました。自分とはまったく別の新しい物語が生まれたことがわかりました。そして、その強烈な物語の中では、私は脇役なのです。かつて、私もそんなふうに生まれてきたのだろうと理解しました。

 そんな大事な日であるのに、信じられないほど地味に過ぎていきました。人々はお終いには注目するのに、始まりには気がつかないものなのかもしれません。でも、物語の中では始まりが大事だと思うんです。始まりがなければ、物語は存在しないのですから。