物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

元気づけてもらいたくて読んだ本

 とりあえず、本はある程度は読んでいるのですが、このところ妙に忙しく、気がかりなことが多くてなかなか創作活動ができません。

 元気づけてもらいたくて再読したのが、まずアゴタ・クリストフの自伝『文盲』(掘茂樹訳/白水社)です。この方は2年前に亡くなられましたが、本には魂が宿っているものだなと思いました。きちんと叱ってもらえた気がします。「さて、人はどのように作家になるかという問いに、私はこう答える。自分の書いているものへの信念をけっして失うことなく、辛抱強く、執拗に書き続けることによってである、と。」

 1956年のハンガリー動乱により、アゴタ・クリストフが4ヶ月の娘を抱えて夫とともにスイスに亡命したのが21歳のとき。以来、その地で使われているフランス語を使うことになったんですよね。1986年、世界的ベストセラーとなった『悪童日記』をフランス語で書いてデヴューしました。…ということは50歳を過ぎていたわけですね。

 なんたって、『文盲』ですからね。この本にはそういったいきさつが書かれているのですが、詳しく書かれているのではなくて、削りに削ったいくつかの文章が入っています。あとがきによると、1989年から1990にかけて雑誌に連載した自伝的エッセイをまとめた本のようです。ということは、50代半ばに書いたものなのですよね。今の私の年代に近いせいなのかな、人生に対する距離感みたいなものに共感しました。

 続けて読んだのが小池昌代さんの『タタド』です。50代の夫婦が海辺の別荘に同世代のお友だちふたりを呼ぶ。川端康成賞受賞作ですね。

 ……あ、なんか、でもこの本については書きにくいな。私、去年、雑誌『ユリイカ』に詩を投稿しておりまして、その選者が小池昌代さんだったのです。丁寧な選評とともに二度ほど掲載してもらって、とても励まされました。