物語とワークショップ

ピッピのくつした/まちだ演劇プロジェクト

しんせかい

芥川賞受賞の山下澄人さんの「しんせかい」、あとで読もうと思うといつも忘れてしまうので、雑誌「新潮」で読みました。

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私はほぼテレビを観ませんので世間一般の情報に疎くて、著者がどういうかたか全然知らない状態で読んだことと、前回読んだ「コンビニ人間」の印象が強く残っていたてので、主人公はすごく現代的な青年だと思って読み進みました。

語り手は、あまり積極的でない理由で、彼女と言えなくもない女性をそのまま地元に置いて俳優養成の学校に入るのです。学校と言っても、山の中に自分たちで作っている最中のもの。ある種の新興宗教のような世間とは違う常識で成り立った世界ですが、あまり説明がなかったので、これは実際にあった世界なのだろうと読んでいて思いました。

だからこそ、ひどく個人的な語り口で物語は語られていき、19歳から20歳の社会からいったん外れてしまう感じが、現代の若者っぽく感じられたのですが、いや30年前の若者も同じ、やっぱり普遍的なものなんだなぁと納得しました。

最近の読書会で若者たちと話しているとき、ふっと自分の若い頃の感覚が蘇ってくることとも一致します。時代よりも、年齢の差のほうが大きいのかなぁ…。異世代交流が難しいのは、年配者が昔の自分を忘れているのが原因かもしれないですね。

良い小説って、色々なことをごまかさないでちゃんと書いてあるんですよね。だから色々な発見があります。若者のみずみずしさがごく自然に書かれていて新鮮でした。

 

 

デンドロカカリヤ

若者たちの流動的読書会で、安倍公房「デンドロカカリヤ」について語り合いました。ずっと以前にも大人たちの読書会でとりあげた作品ですが、そのときよりもずっと深いところまで潜っていきました。また、若者の前向きな読み方に教えられるところもありました。とても面白かったです。

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たとえば、まず主人公のコモン君が個人的な植物化と闘っていきながら、それが自分だけでなく社会の問題だと気がつく物語だというはっきりした認識を持っていることにびっくりしました。(大人の読書会ではそう思わない人が多かったので。)

それでも、この物語から前向きに何かを学びとろうとするのです。

1つめ。闘うときの注意点として一人ではなく、仲間と手をつながなければいけないこと。

2つめ。感覚器官を鋭くして自分の外側の世界をよく見て、よく聞き、よく読むこと。

3つめ。自分自身については一番危険なのは社会と直に接している「顔」であり、頼りになるのは手であり足である。確かに、最初に植物化をするのは顔なんですね。裏返ったり、はげかかったり。

4つめ。これは私には盲点でしたが、恋愛すること。コモン君が一番元気だったのは、彼女の影が見えているときでしたっけ。

やはり若い人は冴えているんだなぁ…。というか、若い頃のことはやっぱり忘れてしまうんじゃないかなと実感。

今回の読書会、私はもっとソフトな作品を考えていたのですが、若者たちの希望でコマの作品になりました。

(最初、カフカの「掟の門」と言われ、初めて来るかたに朗読を聞いて参加してもらうには、もう少し具体性のあるもののほうが…とお願いし「デンドロカカリヤ」に。)

高校生の読書会でも、小学生の絵本の読み聞かせでも、大人の感覚で甘口のものばかり選ぶと、子どもたちの読書離れを助長してしまうというのはいつも実感します。大人はなかなか自分が頭の回転が鈍くなっていることを自覚できないので、つい上から目線になってしまうのですよね。自分の若い頃を考えたって、今よりがんばって難解な本を読んでいましたよね。

保護色猫 見られ方と見え方

明日は雪が降るかもしれないんですね。さすがに寒くなってきました。

昨夕は森でまた保護色猫を見かけました。これは、自分でわざわざ木の根元に入って保護色を意識しているのではないか…?

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そう考えると、先日のもやっぱり石のふりをしていたのではないかと思えてきます。

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なんか猫の観察ばかりしていますが、森を歩いていても、犬を観察する機会がないということが理由にほかなりません。犬の方が人間に近く、猫の方が自然に近いのかな?

私はいまだにガラケーを使っているので(別にそういう主義というわけではなく、ただ面倒なのと経費がかかるのが嫌なのとで)すが、ブログに写真をアップするようになって、むしろガラケーのカメラが面白いなと思うようになりました。

カメラのズームもきかないし、あれこれ調節もできませんが、そのまんまその時の自分が見ていたものに近いものが撮れることから発見があるんです。印象と写真がほぼ一致していることもあれば、ものすごくギャップもあることもある。たぶん自分で無意識的に調節して見ちゃっているのでしょうね。

上の写真でいうと、昨日の木の根元猫は夕方、石猫は朝でかけるときに見かけました。きっと朝の私の方が元気でつい猫に近寄っているのですね。猫のほうもこちらを意識してかなり警戒色が高まっている感じ。猫との距離感もはっきりわかるようです。

先日友人たちと静物をスケッチするという機会があったんです。といってもほんの戯れだったので5分という時間に限定しました。

私はふと目にとまった植物や虫を思わずスケッチすることはよくあるのですが、そういう空間をわざわざつくるというのは久しぶりだったので新鮮でした。そして、描いてみて勝手が違うことに驚きました。

それで、あれ、もしかしたら、私の見方は変わったかも…と気づいたのです。そのものの特徴にももちろん目がいくのですが、関係性とか距離が気になって、そこばかり描こうとしているんです。これは昔からですが、時間ということも気になってしまって、時間を一生懸命描こうとしてしまう。これって小説の描き方なのかもしれない…?

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これもまたいいかげんなガラケーの写真です。

デンドロカカリヤ

なかなかブログが更新できなくて、すみません。書きたいことはたくさんあるのですが、日々気をとられることが多すぎて、ついつい書かずに日がたってしまいます。

今も、まず連絡。

明後日20日(金)午後6時から、流動的読書会があります。今回は少し穏やかな作品をと思ったのですが、若者の皆さんの希望でまたハードな作品。安倍公房「デンドロカカリヤ」です。この作品、私もとても好きです。

2月は17日(金)になると思います。高橋源一郎『動物記』に入っている「文章教室1」をとりあげたいと思います。個の作品集を最近読んで、すごくよくできているなぁと感動しました。最後の「動物記」が私の年齢としては一番ぐっときましたが、読書会では若者向けを意識しました(笑。

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書かなくちゃならないことの筆頭に科博の「ラスコー展」のことがあります。色々なことを感じたし、考えました。でも、簡単に書けないんですね。

あ、単純に驚いたのは、滅びたと思われていたけれども実は私たちも遺伝子の一部を受け継いでいるらしいネアンデルタール人の女性の体形が、私とほぼ同じだということです。なるほどぉ、想像しやすいですね。

ラスコーの壁画に触発されて、15枚ほどの短い未来小説も書いてみたりしました。

オネイロスの伝言

昔、学生の頃に読んでひっかかっている小説があるという話をしたら、友人が国会図書館で調べてコピーしてくれたのです。ありがたいことです。多謝。

有為エンジェル「オネイロスの伝言」という作品です。雑誌「群像」の1984年3月号に掲載されたものです。30年以上前に読んだきりなので、記憶もあいまいになっていました。

そうそう…ということは私はまだ10代でした。確か、大学の図書館で偶然目にとめて読み始めたのでした。

元美術教師で浮気性の父親と古風なようでドライな母親。その間に生まれた、不思議な透視能力を持つ空海という少年の物語。空海は高校生になると、大人たちの上におぞましい幻を見るようになります。

この幻覚が、まるで「サルチネス」なんです。

読んでいて思い出したのは、10代の頃の私にも、こういうのが見えていたということです。それで、この作品が忘れられなかったのですね。そういうことだったのか…。

まだぎりぎり10代の行き詰った自分をリアルに体験しました。いやぁ…(汗。

サルチネス

古谷実のマンガ「サルチネス」(全4巻)を今頃読みました。

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家族はみんな読んでいたのですが、1巻がずーっと見当たらなかったんです。それが、暮れにほんのちょっとだけ掃除をしていたら、その1巻が出てきまして。

面白かった~。日本のマンガって文学なんだなぁとしみじみ。あ、このかたのマンガが特殊なのかな。

中年の引きこもりの男が、妹のために自立しようと頑張る物語です。頑張ると言っても、かなり一般から外れた彼なりの頑張り方なので、もう全然一般には通用しないのですが、なんか癒されました。

(ちょっと疲れているのかな…)

それから、終わり方が強引なのにもびっくり。えっ、これで終わり? でも、それも面白いなぁと。

キャラが描けていれば、ストーリーなんてどうだっていいのかもしれないなぁなんて思いました。

勉強になりました。

保護色

昆虫の本など読んでみました。

この本、 14歳の世渡り術というシリーズの一冊のようです。小説も自分の違う人になってその世界を想像してみるのが面白いですが、これも著者の話術によって私たちにとっても最も身近な虫たちの世渡り術をうっかり垣間見てしまう本です。

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たとえば…うーん、ゴキブリの話とか、身近なのに知らないことがたくさんあって驚きました。そうそう、身近なところでは、アリの話が面白かったですね。

社会性昆虫ってその集団がひとつの生き物みたいに分業になっちゃっていて、人間から見るとかなり苦しそうですが、このおかしな習性を利用しない手はないと、アリの巣の周辺にはその恩恵を受ける色々な生物がいるそうなんです。

アリマキみたいに共生しているものはもちろんですが、アリに擬態してアリの修正などもうまく利用してその集団の中で生活させてもらっちゃう虫がいたり。逆に別の種のアリの働きアリのサナギを強奪して自分の巣にもってきて奴隷として働かせちゃうという種のアリがあるとか。

こちらも、石に擬態でしょうか?

すごい顔で見られてしまいました。

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先日は、枯葉が積もったところに寝そべっていた同じ色の猫が、いきなり飛び上がって、こちらもびっくりしてしまいました。